うた/月形半分子
いけないよ
何故なら秋はあの甘い一房の葡萄
待ち遠しかったものが
長くその身にとどまるとは限らないのだから
君よ、私よ
豊かな実り以上に素晴らしいものは何?
豊かなその香り?豊かなその甘さ?
思案してるうちにほら
秋が待ち切れず君に甘く口づける
君はなんて秋に愛されるがままなんだろう
秋が思う存分君に口づけしている干し草のなか
私たちも早く葡萄を食さなければ
秋がいってしまわぬうちに
秋が去らぬ国など物語のなかにさえないのだから
(冬)
冬は眠る者をおこさない
その雪は子守唄
冬は幸せな者を幸いに閉じ込める
その雪はゆりかご
冬は嘆く者に時
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