動機/三田九郎
こう」ということを伝えるために、数百ページにわたる費やされていたりする。もちろん、登場人物が背負った人生、直面した事件、苦難、そういうものと向き合い、乗り越えてきた歴史、そういったものが具体的に記されてこそ伝わってくるものがある。物語によって提示されるものと、「前向きに生きていこう」の一言とでは重みがまるで違う。読者の心に響くものが違う。
しかし、それでも思ってしまう。小説は手が込みすぎているのではないか、と。
もちろん、僕には小説を書くだけの力量がない。小説を書いてみたいと思うことは昔からあったが、自分が納得できるようなものを書き上げることができたためしはない。
けれど同時に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)