旅/ドクダミ五十号
 


大人は怒る

寒いのが嫌いだから

母親に手を引かれ

降り立った駅にはもちろんコンコースは無い

閑散とした待合にて

バスを待つ

木製のベンチは多数の尻によってツヤツヤとしてた

幼い私にもここに来た目的がわかってはいた

旅の終わりに付き合う為だと

桶にじいちゃんは膝を折って入っている

竿はしっかりと固定され

担ぐ者は肩に重みを覚えるだろう

野辺送りは一列で

幟を支える手は寒さに抗う

じいちゃんは幸せ者だ

旅の終わりにこんなにも沢山の人達が送るのだから

私は未だ旅の途中なのだと

幼いながらも感じたの
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