旅/ドクダミ五十号
たのは
つちまんじゅうと卒塔婆とお線香のビジョンからだった
旅する者は
旅の終わりを知っている
それが如何に寂しいかを
それでも続ける
永遠と決別する為に
旅の果てを思いながら
希薄な現実に戻るのも旅の一部だろう
「さようなら」の言葉も無いままに
未だ溶けず路傍にうずくまって居る
汚れてしまった雪を
散歩の途中に
杖で突きながら
遠い過去の旅と現在の旅を結びつける
トトンガトン ガタンゴトン
常に聞こえて煩わしい耳鳴りとは別の
律動が海馬の底から聞こえる
そして今更ながら
時刻表の無い旅の途中にわたくしはあるのだと
手帳に記すのだった
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