風邪/葉leaf
つくものであったが、不思議と私全体を柔らかく包んでくれるものでもあった。部屋の東側の上部に空けられた窓から入ってくる光にも死が浸透していて、枕元に積まれてある洟をかんだ後のちり紙にも、死はゆっくりと舞い降りているかのようだった。そのように、死はある意味色彩であった。それと同時に、死はある意味構成でもあった。私の体は静かに裏返っており、普段は生の側ばかり現れているが、そんなときは死の側が私を構成しているかのように思えた。人間にとって死は不可能であるが、風邪が酷いとき、死は生の中に透き通っていくものとして、生と絡まり合った。
私を貫く時間の屈折するところに、風邪の時間があった。それは私を苦しみの
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