ホチキス/夏美かをる
パチリ、パチリ、パチリ
不器用にしか動かないその指先から
不格好で不揃いなノートブックが何冊も何冊も
ぱらぱらと舞い落ちる
あっと言う間に床一面に散りばめられた
ノートブックのひとつを拾い上げ
今度は何やらぶつぶつ独りごとを言いながら
彼女にしか読めない文字を書き始めている
よく聞くと独り二役で学校ごっこをしている
「このページにこれを書いて下さい」
「先生、何を書きますか?」
などと拙い英語で言っている
いつになく穏やかな口調だ
今度のクラスは居心地がいいのだろうか?
「今日 新しい男の子が違う町から来たよ。
黒い子だった」
「それから支援の先生と一緒
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