たくあんとぼく/ドクダミ五十号
 
大根は嫌いだと言う言葉が冬休みの合言葉だった

小高い丘が連なる様な古墳群の一角に施設はある

お世辞にも広いとは言えない畑の早朝は

しもやけやあかぎれの手指足指をからかって

まるで冗談のように頬のはたけを白々とさせる

つんつるてんの袖は乾燥したあおっぱなでひかり

お下がりの三乗だと上級生が顔をしかめるズボンは薄い

下は六つから上は十四までのガキ共等の白い息だけが

見えない針が充満したかのような大気で生きていた

冬の早朝に大根を抜いて切れるように冷たい水で洗い

二本一組に葉の根本を藁で縛って

差し渡した丸太をまるで跨ぐ様に干す


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