たくあんとぼく/ドクダミ五十号
何故と問う事は墓石に小便をかけるに並ぶ禁忌だった
泣く事も歯を食いしばって耐えなければならない
一年分のたくあんは貴重な食料だと知っていたから
皺が寄り手で曲がるほどに干されたそれを
長年使い続けた樽の湾曲に沿ってびっしりと並べる
塩をして充分に炒った糠で覆いまた大根を並べて幾層にも
着色料も甘味料も入れない本当のたくあんだ
最後に落し蓋と重しをすれば一年分
麦飯とたくあんとシャケの切り身半分
恥ずかしくて包んできた新聞紙で隠し
背を丸めて食べた弁当
今となれば懐かしくも切ない思い出
飴色のたくあんは遠い記憶の中
作る事と食らう事とそして生きる事の真実を放っている
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