「ちくわ男と紳士」/ドクダミ五十号
人参を 労働に拠って得ればよかろうが」
紳士はせっかくの背広に皺が寄る程の仕草で怒気を
顕にして言う
「出来るならするさぁね」
自嘲と苦味と怒気の混合した声でちくわ男は続ける
「しゃんとしねえと人参は得られねえ
労働しようにも雇ってはもらえねえ 矛盾している」
ちくわ男は身を振ってみせる
しゃっきりどころかふにゃふにゃと揺れた
「これで例えばアンタは雇うかい?」
紳士に問いつつ更に
「労働をしても得られる人参は労働しない方に
少なくとも三本のうち二本は奪われる 酷くなると
もっとだよ それでしゃっきり出来るかい?アンタは」
更にちくわ男は問い詰める
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