「ちくわ男と紳士」/ドクダミ五十号
「何? 俺が怠慢だって言うのか」
ちくわ男は問い返す
「そうだとも 労働もせずだろうが」
仕立ての良い背広の紳士が口角泡を飛ばし言う
ちくわ男は右手に持ったちくわを揺らし
左手の人参を紳士の目の前に近づけて言う
「いいかいご覧よ ほら」
ちくわ男はちくわの穴に人参を差し込んだ
ちくわの穴に丁度良く人参は収まった
そして尚も言う
「なあ シャッキリと自立出来る たいしたものだ」
右手のちくわを振って見せる
「俺には生憎人参を入れてくれる方も
人参もねえんだよそれでどうしてシャッキリ出来る?」
静かな怒気を含んだ低い声で紳士に問うた
「その体で人参
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