途切れたものはいつもかならず手の届かない場所にしか居ない/ホロウ・シカエルボク
入っていなかった、あのラジオを鳴らすことは出来ない、あのラジオはきっとまだ、なにかを受信して大声で叫ぶことが出来るだろう、いろいろな話をして、人々を楽しませることが出来るだろう、だけどこの部屋にはもう電池がなかった、そしてあのラジオはたぶん、すっかり忘れられていつか自分がラジオだったことを忘れてしまうだろう、わたしは立ち上がってシャツの裾を直した、少し寒くなりはじめていた、椅子にかけていたコートを着た、それを着てしまうともうなんだかこの部屋にいる意味がすっかりなくなってしまったような気がした、テーブルの上の紙片には興味が持てなかった、コップを洗っておいたほうがいいだろうか、という考えが頭をかすめた
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