途切れたものはいつもかならず手の届かない場所にしか居ない/ホロウ・シカエルボク
めた、だけど、いったい何のために?そこに水が入っていようといまいと、洗われてきちんと伏せられていようと、もうそんなことにはなんの意味もないのだ、わたしはコートの前をきちんと合わせて、玄関のドアを閉じて預かってきた鍵でそれが望まれない限り開かないようにした、アパートの入口から往来へ出ると歩道の端にさっきの猫が居た、答えの要らない方程式を共有するようにわたしたちはひととき見つめあった、車道では嵐のように車が行きかっていた、こんどそっぽを向いたのはわたしの方だった、こんど、とわたしは思った、わたしの部屋の引き出しに埋もれているありったけの電池を持ってもう一度ここに来てみようか、と、あの部屋の鍵を開けて、あのラジオの蓋を外して、片っ端からその電池を詰め込んでみようかと、それでもし、ほんの一瞬でも、あのラジオが叫ぶことが出来たら、出来たら……
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