途切れたものはいつもかならず手の届かない場所にしか居ない/ホロウ・シカエルボク
ストに近寄り、いちばん上の引き出しをゆっくりと開けてみる、そこには何も入っていない、きっとどこかの段階で処分されたのだろう、もしかしたら初めから何も入っていなかったのかもしれない、そう言われてもわたしは驚かない、二段目の引き出しには洋服かなにかのタグがひとつだけ入っていた、シャツの襟についていたもののようだった、わたしは彼女が最後に着ていたシャツのことを思い出した、光沢のついた白いシャツ、秋の終わりの、フェンシングの剣の一突きみたいな太陽を鮮やかに反射していた白いシャツ、このタグはきっとそのシャツの襟についていたのだろうとわたしは思った、もちろんそんなことになんの根拠もなかったけれど、だからこそゆ
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