11本/Debby
 
ためく洗濯物の隙間で君たちは、恥知らずの二人称を積み重ねて。

 まがった爪をやすりで削った。親指を噛む癖を治すことは諦めた。あなたにそういう文章を書く才能はない、と彼女は言った。故郷では雪が降っていた、ラッキーストライクを売っている自動販売機まで1.5キロもあった街で、雪が降っていた。枯れたパセリはいつの間にか片づけられ、水に漬けておいた人参の頭は芽吹いて腐った。そんなことをするべきじゃないと、彼女に伝えようと思った、寒い部屋はひどく気が滅入った。出すことのない手紙を書き続けた、一人称でいつも悩んだ、僕と君を上手く置き換えれば何もかもが解決する気がした時代があった、それはもうずっと昔のことだ
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