冬の日/ホロウ・シカエルボク
 

また寂しい海の上に出てゆくのだ
ひとりきりの寂しい海の上に


街の方まで戻ってきて
DVDのコーナーでホラー映画のタイトルを読むともなく読んでいた
なにかが気になって振り返ると
あらゆる種類の人間があらゆる種類のパッケージの前で
ぼんやりとタイトルを眺めていた
わたしは船乗りの言葉を思い出し
そして納得がいった
あの男が言っていたのはこういう感覚だったのだ
「それはだけどね、どこにいたって同じことなんですよ」
男の言葉が静かに滑り込んできた
店内に流れているきらびやかなだけの音楽の隙間を縫って


線路沿いを歩きながら私は思った
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