冬の日/ホロウ・シカエルボク
して
それはね、とつぶやいた、そして
「それはだけどね、どこにいたって同じことなんですよ
そういう種類の寂しさはね
海の上だからどうだってことはないですよね
あなたにはきっと判ってもらえると思うんだけどね」そう言った
わたしには判るだろうか?判るような気もするし
まるで判らないような気もした、でもそれは
たぶん判ろうとしていないのかどこかで判りたくないと思っているということかもしれなかった
だからわたしはあいまいに頷いた
男はそれで満足だというように深く頷いた
マッチの礼を言って男は船の方へ戻って行った
きっとそんなに長くとどまってはいられないのだ
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