冬の日/ホロウ・シカエルボク
 
グストアの
破損したシャッターの偶然のナイフに頸動脈を押し当て
今朝、ひとりの浮浪者が路上の塵になった
彼を発見したのは小学校の教師だった
彼はまだ息があり
彼女に向かって喘ぐようにこんなことを言った
「ぼくは世界の染みにしかなれなかった」
彼女は判らないというように首を横に振った
彼はまだ若く、やり直せるようだったし
彼女もまた若く、仕事に熱意を感じていた
子供たちの目に答えようと必死だった
だから彼の言葉はどこにも受け止められず
彼の死よりも早く無きものになった
彼はきっとそんな運命のことを
口にする前から判っていた
もしも彼女が思慮
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