十三階の女/草野大悟
開けベランダに出ると、赤色灯をつけた救急車が駐車場に止まっており、ちょうど救急隊員三人が、担架を持って走るようにマンションに入るところだった。
赤色灯の光が粉雪に反射し、淡い桜色の虹が架かっていた。
突然、救急車の陰から女が飛び出してきた。
女は長髪を振り乱し、救急車の周りを何回も何回もせわしなく回っていた。
救急隊員が119した女を担架にのせてマンションから出てきた。
担架の右横に、寄り添うように男がいた。
男の姿を見たとたん、女が叫んだ。
「あんたぁー、なんでえー、なんでよおー」
その声は、元旦の静寂を引き裂いて、あたり一帯に響き渡った。
男が、ギョッとして一瞬躰をこわば
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