燃えないゴミ/佐々宝砂
を紡ぎ始めています。まやかしが残像に色濃い赤のドレスを被せます。本当に好みでない色のドレスなのですけど、そもそも女物の服って死ぬほど嫌いなのですけど、それしかないのでそれにすがることにします。すると借り物の「私」が再登場します。ああそういえば、そうなのでした、思い出しました。最初から「私」はいなかったのでした、ただ借り物の「私」がいただけなのでした。
こんなことを「私」は何度も繰り返してきたのでした。
「あなた」に出逢う以前から、何度も。何度も。
慣れたことなのでした。ほんとうは。
唄にさえ許されたものでない、と、幻の、非在の、詐欺の、頼りない影でしかない「あなた」が言います。それ
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