燃えないゴミ/佐々宝砂
私がなくなりかかっています。身体の各部分の名称も消え始めていて。ええ。私はほとんど消えかかっています。あなたは、消えてゆく私をどうこうすることができません。私は以前と変わらずあなたの前に姿を見せるでしょう。でもそれは私ではないのです。私に似ているとしても私ではないのです。
一人称でない名詞が私の上にふってきます。とくに「あの」がつく固有名詞がたくさんふってきます。誉めていようとけなしていようと、鋭かろうと甘かろうと、そんなことは無関係に、「あの」つきの固有名詞を見てると私はさらに薄くなってゆきます。使える言葉もどんどん減ってゆきます。遠からず私は消えるでしょう。薄くなって。不毛な土地よりもさ
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