matria/紅月
 

しだいに暮れていく波紋の中心で
いつまでも小刻みに震えつづける母の
わずかな呼吸さえ止めてくれない、
言葉を失って久しい母の
よごれた利き腕が
さらさらと赤い砂になって
窓辺からの風にさらわれていく、
青い血液の枝が渦を巻く、
罪はゆるすことも、
ゆるされないこともなく、
ただ窓辺から空の水際へと
さかしまに投身自殺を繰り返す、
繰り返す影色のとりの、
はねが、さらさらと赤いすなに
なって、かげはかげを
映せないから、といって、
さかしまにとうしんじさつを
する、めいし(たち)が、
絶えるから、絶えてから、
それでも、変わりはない、
といって、ははの細
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