matria/紅月
 

腕のないわたしはどこまでも正常だった、
(ゆるされるということ、
その斥力の彼岸へと伸ばした
わたしのうでは縦に裂ける、


割り算は数字が可哀想だから、
といって、ただ、
ただ掛けあわせていくわたしも、
割られる、割れる刹那の
便宜的な数字でしかない、(いらない、)
延々、わたしを
わたしで割りつづける母、母の
過失がこの身体をすり抜けて、
軽い金属の落ちる音が
何度も私の身体に触れた、
わたしのからだに触れた、
雲ひとつない快晴のしたで
タイルの秩序を繕う腕が
さまよって、
累加する
幾千もの無精卵から
孵るひなどりには嘴がない、
交わりも
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