matria/紅月
(わたしはそれを観ている、)
彼女の病理は、
より大きな病理に蝕まれつづける、
晴れわたる空、
音叉の産声、浸水、
声ではないこえ、が
仄暗い臓器に残響している、
塹壕している、
(の、)
誤った日本語をすり抜ける
誤った対話だけをここに留めて、
白いとり、 黒いとり、
(あらゆるとり、)
散乱する寓話たちの
産卵、に、灯が点って、
鬼火と呼ばれるようになったら
やがてそれらは数列するのですか、
散華の花弁の中心から溢れだす、
黒蝶の片翅はみな壊死しているから、
まばゆい快晴のしたには異形ばかり、
影絵、奇形の影絵は繁茂して
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