matria/紅月
れていく
影絵には体温がない、
ただ凍えている、
凍えてすらいない、
(まどろみのなかで、)
乱立する白い建物のひとつに
母は眠っている、酩酊の、
母は抱かれている、
より大きなははの遺言に抱かれている、
陽がおちることのない窓辺の
ひどく鮮明な母の黎明のうえで
風にもてあそばれる薄いカーテンが
昏睡と覚醒の波を繰り返し描いている、
(わたしはそれを観ている、)
延々と、
他殺に晒される母の隣に、
遂げられない自殺が積もっていく、
水気を失って干からびた、
からからに乾いた記号たちが、
私が、わたしのうでが、
母の細い首を絞めている、
(わ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)