matria/紅月
 
しさを水で充たしていくから、
乾いてしまったははの身体は、
水から逃れるようにして、
みずから空の深淵へと
さかさまに投身していく、
落ちていく、
(わたしはそれを観ている、)
よく晴れた日、(豪雨、)
水面にぷかぷかと浮きあがるははの、
とりの、平たいからだ、(影絵、)
それを底からわたしは見上げ、
また、しだいに浮かび上がっていくわたしの、
ははの、とりの、平たいからだを、
こどもたちが底から見上げている、
(それはわたし、)(あなた、)
(ひらがなが旋回している、)
(流転している、)
鳴りやまない雨音が、
ゆるやかに肥大して、
タイルを打つ、たびに、
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