やがてぼくの言葉は誰にも通じなくなるだろう/ホロウ・シカエルボク
思った、だけどもちろんそんなわけはなくて、あるとき初老の警備員に腕を掴まれた、あのとき蹴っ飛ばしておけばよかったんだと今でもちょっと思う、ちょっとだけだけど、まあとにかくぼくは派出所に連れていかれて、殺風景な椅子に座りながら、ああおれはやっぱりちょっとおかしいんだななんて考えていた、父親はぼくを殴ろうとしたけど酒を飲み過ぎて最初のパンチを空振りした、高校生活の思い出なんてそんなことばかりだった、バカみたいな恋をふたつばかりした、社会人劇団に入りたいと言ったら親父に足の爪が割れるくらいあれこれやられて、一週間くらい家出したこともあった、やりかえさなかった、やりかえす気はまるでなかった、それでぼくは劇
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