静寂は長い叫びと似ている/ホロウ・シカエルボク
植木鉢の中で身をこごめている誰かの名前が記されたノート
砂がその表紙に短い詩を書いて遊んでいる
自転車を漕ぎながらいつか俺もそんな場所へ迷い込んで
二度と出てくることが出来なくなるかもしれない
死体が出ない死ならそれは幸せかもしれない
諦めという悲しみしか生み出せないそんな死なら
短い通りを抜けて現実の中へ放り込まれる度に
決して言葉に出来ない何かを思い出す
そんなものを誰に話すつもりで抱えているのか
思い出しても思い出してもそのことだけは思い出せない
赤いシグナルの前で足を止めると
世界を切り裂くようなヘッドライトが数分光の帯を作る
家の手前で立ち寄ったコンビニエンススト
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