夜と白 ?/木立 悟
刺そうと奏でる
もはや間に合うものはない
あらゆるものを叩いたとしても
啓蒙も 啓発も
鉛の硬度の わずかな差へと消えてゆく
新たに切られた寄生木の数々
つながりたくないのにつながれた音
花の数だけ空は在り
それ以上多く蜘蛛は在る
わたしには他に出来ることがある
そう言って彼女は災厄となり
二度とこの地に戻らなかったが
戻らないことで皆は憶えている
聖も邪もなく
花も雪もない
磔のあなたを
見つめるあなたしかない
筆を胎に挿れながら
借りた光を肉を水を
空へ空へ返しながら
夜は何もなくなってゆく
巨きな咽の
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