存在と錯誤/ただのみきや
その日もいつものように影が巡り日は暮れて行った
だが 夜にこっそりと張られる違法な張り紙みたいに
君の言葉はいつまでも私の芯から離れなかった
以来君のことを心のどこかで憎くらしくなったんだ
ああ風が吹く 風が君を通りすぎる時 大勢の人が囁き合うようだね
だが風が私の電線で切られると男でも女でもない見えない誰かの慟哭が聞こえてくる
それがどんなに疎ましかろうと まるで自分の冷たい芯からこみ上げてくるかのように
だからある日突然人間たちが君の枝を切り落とし
君を低くした時には内心いい気分だったよ
君を見下しては優しい言葉をかけ
私に見えている景色を知らせてあげたものだ
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