蒼い思考 デッサン/前田ふむふむ
たしは 寒さですくんだ手を口にほおばった 街灯のあかりが ゆらゆらと眼のなか一面に泳いでくる ビル風がうずを巻いてくる 禁煙 と書かれた看板が 無機的に貼られた公園で たむろしている浮浪者たちが 猛禽類のように動いている 女が子を産んだらしい 透けるほど白い 少女のような女がタオルを添えて 赤子を抱えている 柔らかいいのちが 夜の冷気にひたり ふるえている なぜだろう 赤子の泣き声が聞えない 耳のなかで砂あらしが吹いている ひとりの浮浪者が壊れかけた電話ボックスで 懇願をしている 他の浮浪者たちは奇声をあげてわめいている ぐったりと 地面に横たわりはじめた少女 湿った太股が あかりに浮かんでいる
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