【HHM参加作品】ぼくらはみんな詩んでいる!??草野心平「冬眠」を音読するために/香瀬
 
作者」を騙る語り手についてです。わたしたちが通常、読書の最中に頭に浮かべる「この小説を書いた人」というのは、読んだ人それぞれの頭の中に発生する「作者」という要素に過ぎない、という考え方があります。そして、実際にわたしたちが目で追っている字面を物語っているのを「語り手」と読みます。このことより、本作中の「作者」は語り手のことであり、作り話であることを意識しないで物語の世界に入り込んでいた読者は、「作者」を騙る語り手が顔を出すことによって、これが作り話であるという現実をつきつけられるわけです。ここでは、小説という構造が読者に対して仕掛けた「物語世界と現実世界の狭間」を見て取ることができます。

 
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