ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで/木屋 亞万
 
いた。「穴のせいで落ちたアリス/幼きメイも穴に堕ちた/ 私もこの穴から堕胎しよう」と結ばれるその詩を僕はほとんど理解できなかった。
君は僕を覗き込みながら、何か返事を待っているようだったけれど、クマさんやウサギさんがハート型の輪になって踊っている表紙と、中の詩のギャップのショックを僕は受け入れることができないまま、詩集を褒める適切な言葉がうまく出てこなかった。
白いレースの洋服を来た背中に、般若の刺青を見つけてしまったような当惑。何をどう褒めたら良いのだろう。君はこれを僕に見せて、どういう言葉を望んでいるのだろう。
「心不全はだいたい自殺/ 起きてこないので様子を見にいったら死んでたも自殺/
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