その日/nonya
り見ていただけだった
おかっぱ頭の子が覗いているから追い払って
ある日
私が病室に入るなり母は真顔で言った
ブローブの指先が示すカーテンの隙間からは
清潔なクリーム色の壁が見えるだけだった
もちろんそこには誰もいるはずはなく
だからと言ってオカルトなどであるはずもない
前の日に私は叔父の名前で呼ばれたし
前の前の日には船で来たのかと訊かれた
母とは確執があった
思い込みが激しく世間体を気にし過ぎる
そんな母の態度がいつも息苦しかった
いなくなればいいのにと何度も思った
小さな亀裂は私が成長するにつれて
深い溝となっていた
溝を飛び越えて私
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