部屋のなかは遠くて明るい/由比良 倖
あ何も感じない。
君に触ったら何か感じるだろうか。
君に触られたら何か感じるかな。
記憶では僕は君を見ていた気がする。
記憶では君は僕を見ていたね。
臨終の時間だろうか?
外は臨終だろうね。
うるさいだろうか。
うるさいのだろうね。
それとも何か別の僕たちは見ていた気がする。
それとも僕たちは別の何か見ていたんだろうね。
もう少しか。
そうかもね。
6
骨折り損したいよ。くたびれ儲けたいよ。長いなあ。長い。この道を帰るのに、何年かかるだろう。死んだら、回送に乗せてくれるかな。道と沼。どちらを行こうかな。どちらも沈むことに変わりはない。僕の血が青いなら、君の空を染めて
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