午前三時/渡 ひろこ
 
痛の時はいつもこの表情だった 
キツいパーマの洗い髪から、ポタポタ滴が落ちる
「大丈夫?早く乾かしたら?風邪引くよ」
途端にパッとそこですべてが消えた



煌々と明るいリビングの電灯
開けたままの窓 
レースのカーテンが風で揺れている
壁の掛け時計は午前三時を指していた



叔父は、すでに十五年前に亡くなっていた 
九州弁交じりの濁声 息遣いまで鮮明な残像
しばし夢と現実との境目に指をかけてぶらさがっていた
黄泉の国へと通じる時間に迷い込んだのだろうか
叔父はどこに行きたかったんだろう 
行き先の地名はもう思い出せない


母は・・・三十年程前の若い
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