黒田三郎詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
なものを意図しないので、普遍性を志向する必要がない。無償で詩を書き見返りを求めない代わりに、彼には表現の無限の自由さが与えられるのです。その自由な表現によって、かけがえのない娘との関係を、そのかけがえのなさと釣り合うように最大限自由に描いていく。
だから、彼の詩には表情がよく見えます。作られた表情ではなく、まさに、内面と外面とが直接交差する現場としての表情です。例えばテレビアナウンサーの言葉に表情はあるでしょうか。言葉を発することを職業として、それによって報酬を得る人の言葉には驚くほど表情がありません。交換可能で流布可能にするためには、言葉は表情を消さなければなりません。それに対して、黒田の詩
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)