黒田三郎詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
の詩からは彼の身体の動きがそのまま伝わってくるかのようです。「小さなあまりにも小さな」というところからは、小ささを彼独特のリズムで強調している口吻がうかがわれますし、「昆虫針でとめられた一羽の蝶のように」という比喩からは、彼の諦めた顔と、それでも自らが蝶のような美しさは保っているのだという美意識を湛えた顔の様子が伝わってきます。詩の言葉には、このように、規格化された言葉にはない誇張や比喩がありますが、それは何よりも詩を書く人間の表情を伝えるものではないでしょうか。言語情報だけでは掬い取れない、微妙なニュアンスや感情の機微、そういうものを「表情」と呼んでいるわけですが、黒田の詩からは、単なる情報には
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