黒田三郎詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
にすぎませんが、その内部には無限の価値があり、父は娘に対し、無償で最大限の力を注ぎます。ところで、全体から見たらあまりにも小さいところに無償のエネルギーを注ぐ、というのは、まさにこの詩が行っていることではないでしょうか。自分と娘の関係、という、社会全体から見たらあまりにも小さい事象に沈潜し、立ち止まり、そこに無限の価値を見出し、それを見返りを求めずに言葉にしたためる。黒田にとって、詩というものは、そのように、交換可能なゲゼルシャフト的なものではなく、それ自体が目的で、交換不可能な、かけがえのないゲマインシャフト的なものだったのです。

 しかし、だからと言って、真に詩人の名に値いする詩人が、僅
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