黒田三郎詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
ては、他人の内側もある程度理解できるようになってきます。自分から見たら他人の実感なんて疑わしいけれど、私自身もその疑わしさをはねのけるだけの実感を持っている。ということは、他人もまた他人の内側から見たら正しい実感を持っているのではないか。誰もが、外側からの懐疑に打ち勝つ内側を持っているのではないか。そのように態度が変わっていかないでしょうか。
外側からの冷淡な懐疑の視線に対して、自らの内側の正当性を主張していく、そのことによって、他者の内側の正当性についても理解が及んでいく。さて、そこにこそ、黒田の本領があるのではないでしょうか。黒田は、自然よりも人間に関心を持ち、特に自己と他者との関係性に関
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