黒田三郎詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
内部を外側からしか見れないからです。
 ですが、黒田はこの詩において、内側の視点と併存するものとして外側の視点を明確にとっている。外側の視点とは、懐疑の視点です。自分は変わったと思っているけれど、本当は自分は全く同じじゃないか。そういう懐疑の目です。それに対して、黒田は自ら自らを基礎づけます。執拗な懐疑に打ち勝つためには、最終的には、自分で自分を正当化しなければなりません。いくら外から見ると変わっていなくても、私は私自身の実感を信じる。私の実感に照らし合わせて私が変わったのなら、私は本当に変わったのだ。
 さて、このように、外側の懐疑の視点と内側の正当化の営みの切り合いを自覚した人間にとっては
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