夏の死体に埋もれて/ホロウ・シカエルボク
りながら
君は行ってしまった
どんなことをしても手の届かない奇妙な駅の改札を抜けて
さよならと手を振ることもせずに
こちらに背を向けて二度と振り返ることなく
僕は地面に落ちた団栗を戯れに口に含んで噛み
そのどうしようもない味に顔をしかめながら
確か一度しか聞いたことのない歌を口ずさんだ
メロディーは不安定で
心を暗くさせたけれど
それこそが僕の欲しいものだった
グラウンドのフェンスに絡まったつる草がいつしか変色して夏の死体になったとき
僕は19歳が死んだことを知った
シュールレアリスティックピローの上の虹は35色になっていたけど
すべての色の境目が不透明
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