夏の死体に埋もれて/ホロウ・シカエルボク
透明でそれはそれは冴えないものだった
誰もが寝静まった夜中、不意に目を覚ました僕は狂ったようにグラウンドを目指し
フェンスに絡まった夏の死体を片っ端からむしり取っては捨てていった
たまたまその時間に巡回に来た警備員に捕まって視界が半分になるほど殴られたけれど
たぶんそれこそが僕の欲しいものだった
夏の死体はバラバラ死体になって
それはもはや夏でも死体でもなかった
あらゆることはそんな風に終わってゆくのだ
いま僕は腫れた顔にいらつきながら
自室の窓の縁に顎を乗せて
家猫みたいに窓の外をずっと見ている
もうすぐ最初の雪が降るよとトランジスタラジオが告げて
空は曇っているけどキンとしている
19歳だった
19歳だったんだ
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