手錠とその因果/MOJO
ても空いた座席に悠々と座りたい。
ところがその朝は寝坊した。始業に間に合わないかもしれない。私は自転車で駅に向かった。駅までの途中に交番がある。交番の前に立っている警官と目が合った。警官は私に手招きをしながら言った。
「停まりなさい」
私はそれを無視してペダルを漕ぐ。警官は走って追いかけてくる。
「その自転車、止まりなさい!」
警官は走りながら叫んでいる。
「うるせえな、遅刻しそうなんだよ」
ペダルを漕ぎながら振り向いて怒鳴り返す。私は競輪選手のように尻を高く上げてペダルを踏み込んだ。
駅に着き、自転車に鍵を掛け改札に向かう。
「待ちなさい!」
なんと警官が追いつい
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