手錠とその因果/MOJO
 
ついてきた。もの凄い形相で私の行く手を阻んでいる。
「どけよ! 朝から善良な市民に因縁つけてんじゃねーよ!」
 私は両手で警官の胸を突いた。
「その自転車の持ち主を知っているぞ! きさま、盗んだな!」
 通勤ラッシュ時の駅は人で溢れている。私と警官は構内で人の流れを停滞させている。皆批難がましい視線を私に向けて改札を通過して行く。制止を無視して改札を抜けようとする私に、警官が警棒を抜きかけた。
「よし、これがおれの身分証明だ。きっちり調べろ!」
 私は財布から運転免許証を抜き取り差しだした。警官はそれを手にとり暫らく見つめていたが表情を一変させた。
「申し訳ありませんでした。私の間違
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