手錠とその因果/MOJO
間違いでした」
警官は顔色を変え、謝り始めた。しかし私の怒りは収まらない。
「朝からヨタかましやがって! きさまのせいで遅刻じゃねーか! そんなことだから誤認逮捕ばっかりなんだぞ!」
私は怒鳴りちらし、警官は平伏している。通勤客の批難轟々たる視線が増す々私をエキサイトさせる。
「きさま、名前何ていうんだ! 場合によっては只じゃ済まさないからな!」
「は、Hといいます」
「ようしHだな、もういい、行けよ! でもこれで済んだと思うなよ!」
都心に向かう混雑を極めた急行電車の吊革に掴まり、私は起ったことを反芻してみる。しかしことの成り行きの因果関係を解き明かすことはできなかった。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)