手錠とその因果/MOJO
 
、私はベッドから起き上がった。
 扉を開けると二人の壮年の男が立っていた。いずれも地味な背広を着て鋭い眼つきをしている。
「何某さんですね、我々はC警察署の者ですが、あなたを逮捕しにきました。これが逮捕令状です」
 背の低い方の男が背広の内ポケットから茶封筒をだし、紙片を抜きとり私の目の前にかざす。
「逮捕……だと?」
 起きぬけの定まらない意識ではあったが、私は狼狽した。
「駐車違反です。あなたは反則金を納めていない。度重なる督促にも無視しつづけましたね」
 思い当たるふしはあった。数年前この部屋に引っ越してきた際、友人から借りたワンボックスワゴンで家財道具を運んだ。その晩はこのア
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