手錠とその因果/MOJO
ながらベッドに潜ったままでいる。そんないつも通りの朝のはずだった。
しかし聴こえたのはアラーム音ではなかった。硬質で鋭角的な、聴き慣れてははいるが、今このときにはそぐわないチャイムの連続音が狭い部屋に響いている。つまり誰かが玄関で呼び鈴を押しているのだ。こんなに朝早くから誰が訪ねてきたのだろう。親戚が急死したとしても電話で済むではないか。それとも近所で火災が起き、隣室の者が知らせてくれているのだろうか。いずれにしても尋常な用件ではなさそうだ。
チャイムは鳴りつづき、どすんどすんと鈍い音も響いている。訪問者は呼び鈴を押しながら拳で扉を叩いているようだ。混濁していた意識をようやく手繰り寄せ、私
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