手錠とその因果/MOJO
っている。隅には便所があるが扉はなく白い和式の便器が剥き出しになっている。ここに来た者は用をたすときも見張られるらしい。
「たかだか駐車違反でこんな目にあうとはね」
私は呟いてみた。呟いたというよりも、この悪相の男たちに宣言したかった。おれは違うのだ。おまえ達はたぶん轢き逃げや当て逃げの類いだろうが、おれは断じて違うのだ。善良な市民なのだ。
「え、おたくもですか?」
向かいに座っている男が応えた。
「おれも駐車違反だけど、朝起き抜けにいきなり手錠ですよ。彼女がびっくりして泣いちゃうし」
そう受けたのは隣に座っているジャージ姿の若い男である。私の見立ては外れたようだ。狭い部屋には奇
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