手錠とその因果/MOJO
 
はないこと。ゴミを出す日にはきまって鴉が突いたゴミ袋から生ゴミが道路に散乱すること。それをいつまでも片付けようとしないこと。運転している男は、それなら住民の署名を集めて管理会社へ訴え管理人を替えてもらったらどうか、などと応じている。そんな、いかにも役人が交わしそうな会話をぼんやり聴くうちに、クルマは裁判所に到着した。
 裁判所の職員に引き渡された私は、壁際にベンチが設置された狭い部屋に連れて行かれた。そこで簡易裁判の順番を待つのである。待っているのは私だけではない。見るからに犯罪を犯しそうな凶悪な人相の男たちが手錠を掛けられ座っている。皆押し黙ったままだ。部屋の入口には制服姿の屈強な警官が立って
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