手錠とその因果/MOJO
 
削ぎ落としたあの朝の私を別人とかん違いしても不思議はない。
 
 最後に質疑の全内容を読み上げた男に、私は今一度「相異ありません」と答え調書に署名した。左の人差し指で拇印を押し、取り調べは終了した。
 C署から裁判所へ移送される際も付き添ったのは早朝の二人組みだった。今度は手を前に組まされ手錠を掛けられた。上半身をシートの背もたれに預けることができて、さっきよりも楽な姿勢がとれた。時刻は通勤ラッシュ時だったが裁判所はC署より郊外にあり、渋滞しているのは対行車線だった。
 調書をとった男はすっかり安心したのか、運転する男と世間話を交わしている。購入したマンションの管理人があまり仕事熱心ではな
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